ELEC出前研修 -実際の授業を踏まえた研修や指導助言、専門家が継続的に学校を訪問‐ ELECでは2015年度より英語科教員の指導技術向上のために、求められる知識や技術を提供する 「ELEC出前研修」(授業改善のための専門家派遣事業)を実施しています。英語教育の専門家(大学教授や教員研修指導経験者)が継続的に学校を訪問し、先生方の疑問・課題と実際の授業内容を踏まえた指導助言や研修を行っています。 |
山形県立新庄南高等学校では「生徒が英語を使用する(話せる・書ける)ようになるための授業モデルの開発をテーマに研修を実施している。以下に学校からの報告書を掲載する。
●第1回目 2017年6月15日(金)
(1)研修内容
平成26年度~平成28年度まで山形スピーク・アウト事業の研究指定を受け、神奈川大学 久保野雅史先生にご指導いただいてきた。今回の研修においても生徒が英語を使用する(話せる・書ける)ようになるための授業モデルの開発を継続して研究した。
1 研究授業・事後研究 英語表現Ⅰ(新庄南高校教諭A)
● 文法の解説だけ、問題演習だけにならず、学んだ文法事項を使用して
様々なことを表現することを目標とした授業モデルの開発
●Output→Input・Intake→Outputの流れによる英語表現の授業モデルの研究
2 研究授業・事後研究 コミュニケーション英語Ⅱ(新庄南高校教諭B)
●即興的に英語を使用できる力の養成
●自分や身近な話題→地域社会や日本の話題→社会的な話題について、論理的に
自分の考えを発表できる力の養成
●Oral Introduction→音読(穴埋め音読を含む)→Oral Review→
Reproduction→Retelling→Output(自己表現)の流れによる
コミュニケーション英語の授業モデルの研究
*本校ではReproductionを「本文中の内容と表現を再現する」、Retellingを
「本文中の表現と異なっても構わないが、できるだけ内容を再現する。
(パラフレーズを推奨)」と定義している。
(2)感想
神奈川大学の久保野先生のご指導のおかげで、昨年度までの流れを継続して研究を進めることができた。生徒が英語を使えるようになるために、「どのような活動をするべきか」「その活動を授業のどこでするべきなのか」など授業を体系的に組み立てるための方法について協議した。また、それぞれの活動をより意義あるものにするための方法を協議したり、指導していただいたりした。以下、具体的に記載する。
1 Dialogueをペアでさせる場合のScriptの工夫
中央で折り、それぞれのスクリプトを見えないようにする。相手の言うことを聞く必然性が生じる。(下記参照)
<Jenny> Kaito, do you have any plans for this summer? |
| <Kaito> | | Yes. | I’m going to go to Okinawa with my family. |
Sounds great! How long will you stay there?
|
| | For three days. | We will swim in the sea. |
2 教科書の内容を少しずつ自分の言葉で表現させるための手順
●穴埋め音読→Reproduction→Retelling
●キーワードを少なくしていく。
●Visual Aidsを使用する。
3 Oral Reviewで生徒から英語を引き出す方法
● 質問する。→キーワードを板書したり、Visual Aidsを使用したりする。
→CompletionなどのRecastをする。
● 語句→チャンク→文のように少しずつ表現できる英語を長くさせる。
4 教科書の表現を覚える(Reproduction)意義
●覚えたらからといってすぐに使えるものではない。
しかし、様々な場面で使用することでだんだん使えるようになる。
5 生徒への問い方の工夫
●What is missing in your life?ではほとんどの生徒が、I’m missing…と
語法を誤る。
●What do you need?を付加すると、ほとんどの生徒がI need…と正しく
答える。
6 チャンクの区切り方
●動詞との関わりや、名詞句を考えた区切りをする。
●第2回 2017年9月12日(火)
(1)研修内容
第1回目の研修に引き続き、今回の研修においても生徒が即興的に英語を使用する(話せる・書ける)ようになるための授業モデルの開発を継続して研究した。
1 研究授業・事後研究 英語表現Ⅰ(新庄南高校教諭2名による授業)
Vision Quest English ExpressionⅠ(啓林館)
Lesson5 The apple pie is delicious
助動詞を使ったレストランでの注文の場面のやりとり
(事後研究より)
●小テストや問題演習の改善
何を扱うかで効果的な問題形式は異なる。Dictationさせるものと日本語から英語に直させるものを使い分ける。並べかえ問題では後置修飾や文型など語順に関わることを問う。また、小テストは前時の学習事項すべてではなく抽出で十分だろう。
●中学校での既習事項と新出事項
中学校でmay「~してもよい」は登場するが「~かもしれない」はほとんど登場しない。それを理解した上での指導が必要である。
●文字と発音の関連付け
発音が難しい単語は既知の単語と結び付ける。生徒がつまずく単語は蓄積しておく。
例)certainly obtain mountain main
age village *弱音節は短く発音する
2 研究授業・事後研究 コミュニケーション英語Ⅱ(新庄南高校教諭A)
World Trek English CommunicationⅡ(桐原書店)
Lesson3 Battle of the Pets: Dogs VS. Cats
犬と猫それぞれの魅力についてDiscussionする
● Oral Introduction
本文中で使用される難解な語や内容をわかるようにパラフレーズして理解させることで、本文の理解がスムーズになる。しかし、学年が上がるにつれて、わざと難しいままにし、精読の段階で内容を考えさせることも学習には必要である。
● Oral Review
意味のやり取りをすることが大切であるが、ターゲットをしぼって、定着させたい表現は何度も言わせ、使わせることは必要であろう。Retelling(本文の表現と異なっても構わない)でよいところとReproduction(本文の表現を使用する)させるところを教員が事前に決めておく。
●精読
説明がどうしても長くなりがちである。焦点をしぼって○○の文法だけはしっかりやろうなど、教員がターゲットをしぼることが大切である。また、生徒たちは本文を日本語にできてもそれがどういうことなのか理解できないことも多い。Cats may have found a way to bring out our nurturing side.の「私たちの育てようとする側面」→「親心」と訳せても「親心」とは何か、どういう気持ちなのかがわからないことがあるだろう。具体的な状況などを補足するとよい。
(2)感想
教員が知っていて当然と思っている内容であっても生徒は知らないことも多いとの指摘にハッとした。英語は日本語に訳せればよいわけではなく、意味が伝達される必要がある。そのためには精読の段階で生徒がイメージしやすい具体例を補足したり、生徒自身に質問したりする必要がある。そして、そのような時間を確保するためにも「ターゲットをしぼった指導」をしていくことが大切である。すべての文法を説明し、理解させようとせずに教員が何を今の段階で指導するのか計画的に授業をしていかなければならない。
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