【2020 ELEC鼎談】 これからの英語教員研修のあり方と求められる教師の指導力

2020.02.07

 2020年度、まもなく新しい学習指導要領が順次施行されることになります。それに伴い、現場教員のみなさんはどのように指導を工夫され、学び豊かな授業を描いていますか。授業改善や指導技術向上に向けて示唆を与えてくれる教員研修について、ELECでも研修講師としてご活躍されている3名の先生方に語っていただきました。

三浦幸子〈都留文科大学教授〉:モデレーター
吉住香織〈神田外語大学特任准教授〉
豊嶋正貴〈文教大学付属中学高等学校教諭 / 文教大学国際学部・國學院大學教育開発推進機構講師〉

 

自らの研修体験を振り返って

三浦:今回の座談会は、「これからの英語教員研修のあり方と求められる教師の指導力」と割と大きいテーマとなりますが、目的は教員研修会参加の奨励と現場の先生方へ一緒に頑張ろうというメッセージを送ることと捉えています。また、私たちがこのELECの研修を参加者として受講し、どのような影響を受けたのかなどの話を共有出来たらと思います。自分自身も原点を振り返りながら、現場教員の「研修の在り方」について 考えていけたら幸いです。では、まず豊嶋先生からお願いします。

豊嶋:はい、僕の初任校は、埼玉県にある私立女子校でしたが、教員二年目ぐらいの時に、校長先生から系列校三校を視察に行く機会をいただきました。そのうちの一校で、ある先生と運命的な出会いを果たしました。その先生は授業もさることながら、人間的にもとても魅力的で、今でも僕のメンター的な存在です。その先生に言われたことが、「研修会に参加してもっと勉強しなさい」ということでした。丁度その時、先生が研修会の講師を務められていたのがELECで、それ以来、学外の研修会に参加するようになりました。それこそひと夏、毎日のように受講した時期もありましたが、そこから更に「ELEC同友会英語教育学会」や「英語授業研究学会(英授研)」などの学会に参加するなど学びの機会が増えていき、教員人生が全く違ったものになりました。研修会に参加して、僕にとって一番大きかったことは、「明日頑張ろう!!」という元気を貰えたことで、気が付けば、今は研修で指導する側にもなっていますが、講師を務めながら受講された先生方も同様に「明日頑張ろう!!」という元気を持ち帰ってもらいたいといつも思っています。

三浦:  豊嶋先生、「明日頑張ろう!!」と思える原動力とは、何だと思いますか。

豊嶋:  そうですね、日々の授業で大変な思いをして悩んでいるのは、自分ひとりだけではないと実感することじゃないですかね。いま活躍されている先生方も同じ道を辿られているし、研修会には同じ悩みを抱えた先生たちも受講されています。それを乗り越えてきた先輩たちが講師を務められているので、そういう方々とつながりを持つことが、研修会や学会の一番のメリットなのかなと思います。

三浦:  現場だと、同じ教科の先生方や他教科の先生方とのつながりもありますが、学外でネットワークを拡げて共有できるものがあると、考え方にも幅が広がったりしますよね。

豊嶋: やはり、井の中の蛙になってはいけないですよね。経験を積んでいくと教材も溜まっていくし、ある程度授業ができるようになっていくじゃないですか。でも、それに満足せず、研修会で頑張っている先生方とお会いすると、逆にインスパイアされることもあるし、研修会に参加することはすごく大事だと再認識しました。

三浦:  「経験を積めば授業はある程度できるようになる」と豊嶋先生がおっしゃっていましたが、それは皆さんに当てはまるかしら。吉住先生いかがですか?

吉住:  そうですね。経験を重ねて授業が向上する部分もありますが、経験だけではカバー出来ないとか、授業がうまくいかなず、どうすればいいか分からない、という場合もあると思います。そういう時に、研修会は自分の経験や実践を見直すきっかけになるかもしれませんね。課題に気付く、アイデアを得る、時には実践の裏付けを得て自信につながることもあるからです。自分の経験を振り返るだけでなく、新たな挑戦も含めて自分の今後の指導を方向付けるのに、研修は1つの機会かなと思います。

三浦:  そこは面白い点ですよね。

吉住:  私は教員になって二年目、英語の力を伸ばせれば、と研修を受講し始めました。当時授業指導については深く考えてなくて、工夫と言っても教科書内容に背景知識を加える程度、自分が生徒として英語を学んでいたものに近い教え方でした。一方で「英語会話」という科目も担当していて、こちらは授業モデルもなく教材も手作り。そこで英語を使った言語活動や発表をやってみると、生徒が積極的で授業に手応えがあった。ただ自己流のまま手探りで授業をやり続けることに不安があり、授業指導についても学びたくて、翌年から様々な研修会に参加しました。そして研修会をハシゴして成果を授業に取り入れてみたのですが、でも結局パッチワークの様な授業になってしまって-(笑)。自分の経験と研修で学んだことをどんな形で活かせばいいか、授業ポリシーが曖昧で授業の組み立て方もよく分かっていなかったんです。

三浦:  研修で教わったことも原理が分かっていないと、持続しませんよね。

豊嶋:  最初は上手くいっても、後で破綻します。

吉住:  そうなんです。よい所を真似してみること自体は授業改善につながる可能性もあるし、決して悪いことではないと思います。でも根拠や理念を問わずにただ真似しても、授業に一貫性がなく、学んだことを自分なりに再構築することは出来ないんですね。

三浦:  私も最初の五年間は私学で中学高校と両方を教えていて、最初は真似からだったので、英語教師としてのアイデンティティはまったくなかったですよ。

吉住:  私と同じ?!(笑)

豊嶋:  皆、一緒、一緒(笑笑)

吉住: 当時の私には、授業を俯瞰する視点も欠けていたと思います。でも、80年代半ばに参加したELECの研修会が大きな転機となりました。午前は英語力向上、午後は模擬授業、夜は英語教育の専門家によるレクチャーで、1週間、文字通り朝から晩までのプログラムです。目玉は参加者による模擬授業と合評会で、互いの授業を観てクリティカルな視点で協議します。学んだ指導理論や授業の組み立てを踏まえて、自分が行った1つ1つの指導や言語活動の狙いや繋がりについて徹底的に話し合う、大変だったけど自分の授業観を築く上でまさに「目から鱗」の体験でした。確か「コミュニケーション」や「インタラクション」という言葉が日本にも広がり始めた頃で、別の研修会に参加した職場の同僚と戻ってすぐ情報交換したのを覚えています。お互いに研修を振り返ると学んだことへの理解も深まって、これがとっても良かった2学期から授業をガラリと変えました。

三浦:  いい経験でしたね。

吉住:  確かに恵まれていました。授業が変わったので生徒も初めは戸惑っていたんですけど、授業が良くなると歓迎してくれました。教師の学びは伝わります

豊嶋:  自分の教え子が教育実習で戻ってきたときなどに、「えーっ、先生の授業、変わったね」といい意味で言われたいですよね。

三浦:  そうね。「先生も頑張っているんだなぁ」と解釈してくれたら嬉しいですね。私の場合、良かったことは、大学の附属だったので、大学の先生方が見に来てくださり、早い段階で研修の機会が多くあったことでした。その当時はLLや口頭ドリルの全盛期で、大学から送られてくるパターン・プラクティスの教材も使っていました。自分から意識して積極的に研修に参加し始めたのは四、五年目あたりからでしょうか。その同僚の頑張りに刺激されてELECの研修や、「語学教育研究所(語研)」そして「ELEC同友会英語教育学会」などに参加するようになりました。それにより新たな視点に気づいたり、授業計画を考えたりすることでワクワクしたのをおぼえています。多くの方々との出会いや学びにより気持ちが前向きになりますよね。


研修を通して変わったこと

三浦:  今まで授業を行ってきて、最初のころと比べて自分が変わってきたと思う点は、どういうところがありますか。

豊嶋:  僕自身授業に対する考え方はかなり変わったと思います。一番変わったことは、生徒の自慢をするようになったことだと思います。教師ではなく、生徒が授業中に、いい表情をしていることが、いい授業だったかどうかの答えだと思うようになりました。授業の教育効果として、今では、そこに喜びを感じるようになりました。

三浦:  その点で、ひとつ質問したいのですが、生徒がいい顔して発表しているのは、どういう仕掛けがあったからだと思いますか。

豊嶋: 仕掛けというよりも、今まで色々と失敗してきたことかなって思います。以前は、原稿を書かせ添削して、そのままスピーチさせるだけだったような気がします。聞く側もしっかり育てていくことが重要で、スピーチを聞いている生徒たちが、つまらなそうにしていると、発表者はいやになってしまいます。やはり発表した内容によって、聞き手を満足させ、その拍手によって、発表者に達成感を持たせたいと思っています。聞き手が内容を理解しやすくなるように、発表者には、プレゼンの内容を用紙1枚に写真などを使って図式化させ、それをノートとして聞き手に渡しておき、発表を聞きながらそこにメモするように指導しています。発表活動を成功に導くために、作業を細分化することは、新学習指導要領では、とても必要なことだと思います。

吉住:  今後求められている、論理的思考の整理にも役立ちますよね。

豊嶋:  はい、発表の内容をまとめさせた後にパワーポイントやPrezi(以下、スライド)[M1] を作らせると、とても効果的なスライドに仕上がります。スライドを作るとき自分の写真の羅列しかできずに、伝えたいことが表現できない。だから、この手順を入れることによって、発表者は聞き手を意識するようになり、内容が伝わりやすくなります。

吉住:  オーディエンスとのインタラクションを話し手に意識させることは、発表者が話の内容を考え、整理していく上でとても大事ですね。

三浦:  スピーチがいいのは自分の言葉で表現できることと、もう一つはメッセージを伝えられることだと思うんですよね。他の人が持ってない情報を提供したり、知らないことが知れたりできるのがいいです。自分が何を一番伝えたくて、相手によりよく伝えられるためにはどの順番で話すか、そういう段階をしっかり組み立てる力を指導していくということですよね。


教員の英語力と教員のスタンス

三浦:  現場の先生方の不安材料の一つとして、自分たちの英語力不足があると思いますが、それでいて良いモデルにならないといけないというプレッシャーが、もしかしたらあるかもしれないですよね。卒業生からも、もっと勉強しておけば良かった、海外でもっと勉強したいなどの声がありますが、そういう教員に対しては、どういうお考えがありますか?

豊嶋:  いま大学で教授法を教えて思うのは、英語力がある学生ほど良い模擬授業ができますよね。逆に、英語力がさほど高くない学生だと、オーラルイントロダクションをさせても、教科書に載っている表現をそのまま使っているだけで、英文の意図を言い換える力がないので、そこは練習しないといけないかなと思います。

吉住:  だいぶ前になりますが、『英語教育』(大修館書店)に、英語授業の力で「何が出来て、何が出来ていないか」という特集があったのですが、教員が「出来ている」と答えたのが「文法力」と「読解力」で、逆に苦手だという項目の筆頭に挙がるのが、正に「パラフレーズの力」や「発問力」でした。どちらにも言語知識や英語力に加えて様々な力が必要です。例えばパラフレーズは、目の前の生徒にどんなパラフレーズが適切か、メッセージを読み取った上で、他の提示手段の可能性も含めて判断する必要がありますよね。生徒の興味やスキーマ、さらに第二言語習得理論を踏まえて、文脈や場面に配慮しながら生徒が理解出来る英語で言い換える、いわば総合的な英語指導力が求められると思います。生徒の反応に柔軟に対応してやりとり出来る即興力、AIには真似出来ない、教員だからこそ持てる力と言えるかもしれません。ただし英語が堪能なら自然に伸びる力ではないので、読み込む力や表現方法のバリエーションも含めて、まさにワークショップや研修が役に立つのではないでしょうか。

三浦:  私もそう思います。そして、簡単に言い換える時でも教科書にあるキーワードを敢えて挙げていくような指導力も必要ですね。また、生徒の発言をどう拾って、言い直しながら真意を確認するかなどの意味交渉も重要だと思います。新人の頃に参加した研修会で、ある講師の方が自分は英語力を授業で鍛えているとおっしゃっていたのが印象的でしたが、生徒たちとのやり取りを通して英語教師としての私たちの英語力も向上できるのではないでしょうか。


三浦:  続いて、教員のスタンスについて、お聞きしたいと思いますが、私が中高で教えていた時は、自分の練習も含めてスピーチやプレゼンを一緒にやっていたんですよね。

吉住:  モデルを示すということですか?

三浦:  モデルというよりサンプルかな。皆が選ばないようなトピックを敢えて選んで、参加者の一人として行います。その際に、聞き手の生徒たちはノートテイキングやフィードバックの仕方にも慣れるわけです。回収したフィードバックシートから、生徒はどんなところに注意を払うのか、何が聞き取れて、聞き取れなかったのかを把握できて、その後に指導に活かせました。分かりやすいと思ったら真似してくれるところも面白いし、時には厳しい指摘もありました(笑)。教員も自分が絶対的なモデルである必要もなくて、一緒に学んでいけるのかなと思います。

吉住:  生徒はコ・プラクティショナー、実感しています。授業って教師と生徒の両者が協力して作り上げていく部分が大きいですよね。 

三浦:  まさしくそうです。

豊嶋:  僕は以前、生徒にプレゼンやスピーチをさせている時、ビデオ撮影したり、評価したりするだけで、結局はただ形ばかりの活動を取り入れ、すべての準備を生徒任せにするだけで、リハーサルにつきあってあげるなど、十分に面倒を見ていませんでした。「頑張れ」ではなくて「一緒に頑張ろう」にならないといけないということを学びました。

三浦: そうですね。「一緒に頑張る」ってお互いに楽しいですしね。それに新学習指導要領の「深い学び」にもつながるのではないでしょうか。

豊嶋: 新学習指導要領では、学び方(アクティブラーニング)についても、「主体的・対話的で深い学び」と記述されていますが、「対話」は、決して生徒同士の対話だけではなく、先生との対話、教材との対話、色々なものとの対話が含まれています。「対話」がなければ、決して「深い学び」には達しないと思います。

三浦:  「対話」というと、言葉に出すことに着目しがちですけど、やはり題材のメッセージとは何かなぁとか、生徒の発話に対してどういう発問や返しをしていったらもう少し深くこの作者との対話ができるかなども大事ですよね。

吉住:  研修会では受講者によく、「教材をどんな視点で分析していますか?」と尋ねます。書き手と読み手、生徒、教師、登場人物など、立場を変えて教材を批判的に読むと読み方が重層的になるからです。異なる視点からメッセージを解釈することで理解も思考も深まると思います。教科書の本文は短いし、英語や流れが不自然なこともあります。でも様々な次元の対話を通してメッセージを掘り下げたり内容を膨らませたりしながら、生徒の思考や創造力に働き掛けていきたいですね。


ELECの出前研修を振り返って

三浦: ELECの公益事業でもある「出前研修」というものがあって、別々の日ではありましたが、私たちが地方へ出向いて研修をした公立高校がありましたね。振り返ってみて、どのようにお感じになったか、少しお話をしていただけますか。

吉住:  私がその学校で初回の研修を担当した時、事前にアンケートを取ったのですが、英語での授業は「無理」「英語嫌いが増える」といった心配の声が多く、授業観も様々でした。研修がどう展開するか少し心配しましたが、全くの杞憂でした意見が違っても同じ英語科同士、皆さん和気藹々、熱心でアイデアも沢山出ました。研修後のアンケートには、「ああすればよかった」「こんなことが出来そう」等の気づきと共に、英語での授業の捉え方にも大きな変化があったことが綴られていて、驚くと同時に嬉しくなりました。教師にとって、生徒からのフィードバックは重要だけど、自分の授業がこれでいいのかな、と思った時、相談出来ない。でもこの学校の様に校内で同僚と一緒に研修する機会が持てれば、生徒状況について共通理解があるだけに共感出来る部分が多い。授業改善のヒントが出やすいし互いのアイデアからの学び合いもあって自信にも繋がります。本当に温かい研修でした。

三浦:  それはたいへん意味のあることですよね。

豊嶋:  僕も、その学校で研修講師をさせていただいた時に感じたことは、先生方の頭の中にある生徒たちのイメージが共有されていると、課題が明確になり、とても有意義な研修になるということでした。校内研修を行う意義を感じました。

吉住:  再度、その学校の研修講師を依頼された時、初回の研修後の授業を見せていただけないか、と提案してみました。ただ研修から僅か半年後だったので、たとえお一人でも授業改善に取り組まれた先生の授業を拝見出来れば、との思いでした。ところが驚いたことに、三人もの先生が授業公開を申し出てくださったのです。

三浦:  私も吉住先生の後に研修講師を引き継ぎましたが、学習指導案は素晴らしいのに、活動とうまく合っていない点をどう改善するか皆で考えたいと思い、発問や代案を考えていきました。皆さん、とても積極的に意見を出してくださってこちらも勉強になりました。こういう研修は自分たちだけでするよりは、客観的に見て手助けできる第三者である講師がいることに意味があると思います。教員になった卒業生から、校内で先輩たちに言われたとおりに教えなくてはいけなくて、自分の意見を言いづらい人間関係もあると、よく聞くのですが、やはり第三者が入れば、若い方もベテランの方もそれぞれの意見が言いやすいのかなと思いました。確かに、年齢によって観る視点の温度差って多少あると思いますが。。。

吉住:  色々な世代の先生方が、研修に参加されていること自体、素晴らしいですよね。ましてやベテランの先生方が学び続ける姿に、他の先生も触発されると思います。

三浦: そうですよね。その上でキャリアの差があって、もすごく率直に色々と意見を言ってくださり、多少考え方の違いはあっても、一緒に学び合おうという姿勢で参加いただいた点に、出前研修の大きな意味があると思いました。この学校は自主的にELECの出前研修に申し込んでやりだしたわけだし、校長先生の主導や教育委員会主導でやるものとは、やはり違うかなと思います。

吉住: 教育委員会主催や外部研修だと、皆の前で何か言うと悪いかなとか、先生方はやっぱり遠慮しますよね。でも校内なら互いに発言し易い。まさに協同学習でした。

豊嶋: 僕の教え子で看護師がいるのですが、「医学は常に進歩しているから、 勉強を終えて卒業したからと言って、一人前の看護師というわけではなく、その後もずっと研修し続けて、新しいことに対処しなくてはいけない」と話してくれた時、教員も同じだと思いました。大学で指導法を学び卒業して免許を取得したから、そこで学びが終わりと言うことではないですよね。教育も常に進歩を続けて新しい指導方法やICTなどもどんどん進化し続けているわけですから、やはり、こういう研修を通じて常に学び続ける姿勢を我々も持たないといけないと、その教え子から学びました。

吉住: だからポスト研修、その後も大事だと思います。研修に参加したら終わり、とはなりませんよね。現場に戻って実際試してみれば疑問点も出てくるはずです。継続して学び続ける為には、研修のフォローアップが必要だと思います。そこまでELECでカバーして頂ければ嬉しいですね。

豊嶋:そうですね。英語教育もどんどん発展しているわけで、指導力のある先生もきっと進歩しているはずだから、そういう先生を再び呼んでお話を聞くこともやっていかなければならないですよね。


まとめ 

三浦:  今日は、教員研修の意義について色々と示唆に富んだお話ができましたが、そろそろまとめに入りたいと思います。豊嶋先生いかがですか。

豊嶋:  始めにも言いましたが、僕が考える研修会の目的はやはり「仲間づくり」だと思います。とにかく一人で抱え込むことが一番良くないと思うので、同じ思いを持った先生方と知り合いになること、困難を乗り越えてきた先輩たちから学ぶことによって、色々なことを乗り越える力を手に入れてほしいです。どんなに忙しくても研修会に行き続ける姿勢、学び続ける姿勢を私たちは忘れてはいけないし、持ち続けることが大切だと思います。最近、ELECのスタッフの方にも支えていただきながら、工藤先生(玉川大)、松下先生(大阪府教育庁)、津久井先生(お茶の水女子大附属高)、僕の四人で「英語きょういくカルテット」という活動を行っています。全く違うバックグラウンドの英語教師が集まって、楽しそうに英語教育に取り組んでいる姿を全国の先生方に見ていただき、ああいう仲間を作りたいなって思ってもらえたらというのが、この活動を始めた一番の目的なのです。

三浦:  田尻先生方の「ゆかいな仲間たち」みたいな感じですね。(笑)吉住先生、最後にいかがでしょうか。

吉住:  仲間は財産、素敵ですね!! ただ、残念ながら今は、研修に参加する時間的・精神的ゆとりが教員に十分保障されているとは言えません。目指す英語教育を実現するには、教員1人1人が主体的・自律的学びを追求できる現場の条件整備が急務だと思います。一方で、多忙の中でもELECの教員研修会に参加される先生方の熱意と意欲にいつも頭が下がります。研修は、講習だけでなくバックグラウンドの異なる教員同士が考えを共有することで学べることも沢山あります。視点が広がるという意味では、自分が何を目指して英語教育に携わっているかを再確認する機会にもなります。研修に参加する以上、ぜひそれが自身のエンパワーに繋がるものになって欲しいと願っています。

三浦:  少し異なる視点から言えば、とても忙しいのに苦手なことを断るとか、人に頼むことが難しいと思う教員って多いですよね。私もそうで、あるとき生徒にスチューデント・ティーチャーとして任せてみたら結構楽になった。もちろん最初は、教室外での個別指導が必要ですが、慣れると楽。ある研修でその話をしたら「教師の負担を軽減しつつ、積極的に関わっていける指導になる」とアンケートに書いてくださった方がいました。生徒を動かして教員の負担を軽減することが、もしかしたら主体的な学びにつながるのではないかと思います。

豊嶋:  そうかもしれないですよね。先生が一人で作るのではなく、皆で作り上げていくものだという考え方ですよね。

吉住:  英語に限らず、他教科と連携することや、先生方が社会とのつながりをもち続けることも大切だと思います。

豊嶋:  そう、英語に限らず。色々な科目があるわけで、結局全部合わせて一つの学力ですからね。

三浦:  同感です。新人の頃、同じ学年に英語教員は私だけでしたので、他教科の先生方の指導からも多くを学ばせてもらったのですが、今振り返って、たいへん有益だったと実感できます。それと、学外研修に参加する意味は、同じような悩みを抱えて頑張っている人たちに出会えることですね。

これからも研究会や研修会が、そういうきっかけになるような場であってほしいですね。では,お時間となりましたので、これで鼎談を終了といたします。今日はどうもありがとうございました。


(文責:ELEC通信編集部)