[ELEC英語教育賞 2022年度受賞校取組]
久米川東小学校

いきいきとコミュニケーションを図り、課題を解決しようとする児童の育成
~CLILを通して世界とつながる力を育てる教育課程の開発~

2022年度 ELEC英語教育賞 文部科学大臣賞を受賞した東村山市立久米川東小学校の取組を紹介します。

第6学年『Heal The World~世界を笑顔で満たそう~ 授業者 : 杉山 將敏 教諭』
こちらよりご覧ください

1.取組前の課題

本校では、平成29・30年度の2年間、東村山市教育委員会研究奨励校として、外国語科・外国語活動の授業づくりを通して、「すすんで表現する児童の育成」を目指し、授業改善に取り組んだ。英語のやり取りの中で、自分の考えや気持ちを素直に表現したり、相手のよさを見付けて自分の活動に生かしたりすることができるようになり、相手とのコミュニケーションを楽しむ姿が増え、目指す児童の姿の具現化に向けて、一定の成果が得られた。

一方で、課題として、各教科等の内容と関連を図った外国語科・外国語活動を行ったことで、学習への興味・関心は高まったものの、児童が学習したことを「真に英語で伝えたい」と思い、学び続けることができる学習内容を系統的に確立させる必要があった。

2.改善目標  

そこで、本校では、令和元年度から令和4年度までの4年間、「外国語科・外国語活動と各教科等との統合を図ったCLIL(内容言語統合型学習)を用いた指導方法を取り入れた研究開発」を行い、他者とのコミュニケーションの基盤を育成する学習活動を展開するとともに、英語に触れながら考えたり表現したりすることを通し、豊かなコミュニケーション能力の育成と各教科等における質的学力の向上を目指し、授業改善に取り組んできた。研究開発においては、外国語学習と各教科等の内容を統合させ、そこに深い学びを促す創造的思考や自分の思いや考えをいきいきと表現する感性・情緒等を踏まえた、小学校6年間のカリキュラムとして編成した新教科「eタイム」を創設した。

研究主題は、「いきいきとコミュニケーションを図り、課題を解決しようとする児童の育成」、副主題を「CLILを通して世界とつながる力を育てる教育課程の開発」と設定した。研究主題で示す児童の姿の実現に向け、外国語科・外国語活動と各教科等をつなぐ役割を担う新教科「eタイム」を設定し、教育課程の編成、授業における指導方法及び評価計画の研究に取り組み、以下の3点について研究開発に取り組み、実践を積み重ねてきた。

  • 小学校6年間を見通した外国語学習カリキュラムの開発
  • CLIL(内容言語統合型学習)の指導方法を用いたカリキュラムの開発
  • 多様な他者との協働的な学びを実現する指導方法の開発

3.目標達成に向けた具体的な活動内容

小学校6年間を見通した外国語学習カリキュラムの開発

新設教科「eタイム」を軸とし、外国語学習と各教科等における内容を統合して学習する時間「ロングeタイム」と「ロングeタイム」に学習した表現や単語に繰り返し触れ、既習事項の定着を図る時間「ショートeタイム」を設定した。新設教科「eタイム」及び外国語科・外国語活動の総計として、低学年(第1・2学年)が35時間、中学年(第3・4学年)が70時間、高学年(第5・6学年)が105時間を実施し、15分間の短時間学習を含んだ教育課程の開発を行った。

CLIL(内容言語統合型学習)の指導方法を用いたカリキュラムの開発

CLILは、言語学習と各教科等の内容を統合させ、そこに思考活動と協働学習、異文化理解を取り入れ、児童の体験的学習を促進する指導方法である。児童にとって、身近な各教科等における学びや生活に根差した簡単な事柄について聞いたり、話したり、調べたりしたことを通して、自分との関わりの中で、自分の考えや気持ちを伝え合う力を身に付けさせることができるように、CLILの指導方法に系統的にSDGsの学習を取り入れ、本校独自の小学校でも行えるCLILを用いた単元開発を行った。

多様な他者との協働的な学びを実現する指導方法の開発

多様な他者との協働的な学びを実現する指導方法の開発である。ICT機器(遠隔教育システム、タブレット型端末、電子辞書等)を活用し、児童のコミュニケーションに対する意欲を重視し、多様な他者とのコミュニケーション方法を開発した。

英語活用力を高めるための手だて
自己分析力を高めるための手だて
実行力を高めるための手だて

4.得られた成果とその評価  

  • 課題解決に向けて、教科横断的な思考を働かせたり、真に「考えたい」「行動したい」という自分の思いや考えを英語で伝え合ったりすることができるようになった。
  • 英語における「聞くこと・話すこと・読むこと・書くこと」に関する学習をバランスよく行うことができた。
  • 既習の語彙や表現に慣れ親しんだり、内容の定着を図ったりすることができた。
  • 互いの文化や価値観について理解することや自分たちの学校や地域等のよさを見つめ直すことにつながった。

小学校においては、教科の内容を英語で指導するHard CLILではなく、児童に学ばせたい内容や考えさせたい事柄を、教師側が児童や学校の実態に応じて選定したり、これまで学習した教科の内容を生かしたりしながら指導するSoft CLILが適しているということが分かった。
本校が4年間取り組んできた実践が、全国の小学校の新たな英語教育への礎となり、自分の思いや考えをより豊かに、よりいきいきと英語で伝え合うことができる児童の育成へとつながっていくことを願っている。

(2022年度ELEC英語教育賞 久米川東小学校の申請書を編集して掲載しました)